(2006/7/6〜7)
                          

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嬉野温泉

嬉野温泉

ちょっとした偶然から嬉野温泉を訪ねることになった。

7月6日から2泊3日の予定で長崎に住む母の見舞いに出かける予定であった。

今回の見舞いは在京の次女の予定が立っての計画である。そのスケジュールに便乗して私も思い立った。

当初の予定を変えて、急に1日は佐賀県の嬉野温泉に宿泊することになった。

今回嬉野温泉へ宿泊を決めたきっかけは、ネットの「楽天トラベル」から届いた1通のメールが端緒であった。ホテルの案内に嬉野温泉があった。母の住む諫早に近いことも判った。

訪ねたことのない嬉野温泉、泊まってみたいとその気になって娘に話した。彼女は、日頃仕事で忙しい生活をしている。見舞いついでに(不謹慎)温泉も欲張ってみない?と勧めた。女性プランがあったので、急遽宿泊の予約をした。2食付、エステプランである。


7月6日、九州新幹線で嬉野温泉へ

鹿児島中央駅から、1309発の九州新幹線に乗って鳥栖で乗り換えた。鉄道時代、今もそうであるが、鳥栖は長崎・佐賀へ行く分岐点である。カラフルな車両が連結してホームに入ってきた。

間違った車両に乗ったら大変である。一旦ホームに下りてからでないと通り抜けられない車両もある。とアナウンスしている。まるで寄り合い所帯のような連結車である。長崎方面への長崎本線、ハウステンボスなどへ行く佐世保線が一緒になっている。目的地によって分岐点で細かく乗換えが必要となる。私の下車はJR・武雄温泉駅である。佐世保へ行くみどり21号車両へ乗り換えた。肥前山口駅で長崎本線と分離した。

武雄温泉駅で下車した。ここから嬉野温泉へのルートは、マイカーでなければ、JRバスかタクシー利用のどちらかである。

ホテルのチェックインまでは間がある。急ぐこともない。タクシーもいたが、バスに乗ろうとバス停へ向かった。初めての地である。路線バスに乗って周りの景色を眺めながら行きたかったから。

ダイヤ表を見ると1時間に2本の運行である。バスは今出たばかりのようだ。ホテルへ電話確認した時、終点下車と聞いていた。不案内なところで、時刻表に南口発と書いてある便もあって迷っていた。

中学の女生徒が通りかっかったので尋ねた。

「列車が着いた時に、バスが出るようです。駅で聞いてきましょうか」

「大丈夫よ、少し待って無理なようであればタクシーに切り替えるから」

少し経ってさっきの女生徒が後帰ってきた。

「このバス停からの便は、間違いなく嬉野温泉に行くそうです」

「ありがとう、聞いてきてくれたのね。中学何年生?」

「2年です」

部活動からの帰宅途中であった。汗ばんで戻ってきて親切に教えてくれた。

言葉の響きに、この地らしいやさしい抑揚があった。佐賀県は母の出身地でもある。余計にうれしかった。

田園風景を楽しみながら、40分ぐらいで嬉野温泉に着いた。今夜の宿はホテル「桜」である。この宿で、次女と落ち合うことにしている。

6時過ぎに“長崎空港に着いた。今からホテルへ向かう”とメールが入った。

長崎空港から嬉野のホテルまではアクセスが悪い。案内では長崎空港からバスで40分とある。だが直行の便はない。公共機関を利用したい旅人には不便である。長崎・佐賀の両県にまたがっているからだろうか。車だと高速利用で30分の所要時間である。


嬉野温泉

嬉野は、温泉地として有名なところである。もっと足の便がよければと感じた。娘には、予めタクシーを利用するように伝えておいた。6時半ごろ到着した。花瓶

入り口の伊万里焼の大きな花瓶が目に付く。ここ佐賀県は有田焼の産地である。

ホテルのメインは10Fまで吹き抜けになっている。地上30メートルから垂直に流れ落ちる滝のスクリーンに桜、紫陽花、紅葉、椿と日本の四季を代表する花々が次々に浮かびあがる。

対面するシースルーエレベーターに乗り込めば、光ファイバーによって花々が色変わりしていくさまはファンタスチックで涼感がある。

エレベーター

明日は七夕、ロビーに七夕飾りの笹が立ててある。

10階に大浴場、露天岩風呂、サウナ風呂、ジェットバスが完備している。

大浴場の天井には柿右衛門と古伊万里をイメージした有田焼の陶板がはめこまれている。眼下に嬉野の町が広がり一望できる。景観を楽しみながら温泉に浸ると疲れも吹っ飛ぶ。

旅館の大浴場は1、2Fにあることが多い。最上階にあると素晴らしい眺望を望める。

日本3大美肌の湯と謳っている。あとの2箇所はどこだろう?

嬉野はお茶の産地として知られている。

出されたお茶が美味しい! お茶所とはいえ、宿ではあじわったことのない風味である。

6Fの部屋(和室)から眺めると、茶畑や、温泉地らしく湯煙が上がっている。

夕食は佐賀牛をメインとした会席料理を選んだ。部屋まで運んでくれる。

小鉢の胡麻和え風の食感が珍しい。魚介類とは思ったが、食用のイソギンチャクと聞いて驚いた。

佐賀牛はさし(霜降り)が入って軟らかい。塩味(モンゴルの岩塩)で食べるとシンプルで肉のうまみが引き立つ。

日本3大美肌の湯に入り、温まった。足のマッサージをしてもらったら、さらに爽快、睡魔に襲われるまま、眠ってしまった。


7月7日、嬉野温泉から長崎へ

電話のベルで起こされた。急いで部屋のカーテンを開けたら表は明るい。

7時を過ぎている。こんな時間まで目覚めないとは・・・・

7時30分に朝食を頼んでいた。和室に宿泊している。布団を片づけに来る、慌てて着替えをすませた。昨夜の温泉とマッサージの効能は大きい。目覚め時も忘れるぐらいに熟睡した。疲労回復したに違いない、目覚めは爽快である。

朝食の湯豆腐がおいしい。この食感は、木綿?否、絹ごし?どちらでもない。口当たりもまろやかで大豆の風味がよい。

あとで「温泉湯豆腐」と聞いた。温泉湯豆腐は、煮込むことにより、汁が白濁し豆腐がとろけてくるのが特徴である。沸騰し続けると豆腐はなくなるという。

中火ぐらいでゆっくり火を通し、水が白濁したら火を止める。薬味、ごまだれ、ポン酢でいただく。箸では?みにくく、くずれ易いのでスプーンで掬って食べる。まるで淡雪のような食感である。

嬉野茶と並び名物となっている。

嬉野はお茶所である。宿で出された「温」、「冷」どちらのお茶も非常に美味しい。何度もお代わりした。旅館では滅多に出合えない美味しい緑茶である。

嬉野=緑茶、記憶に残る風味である。

娘とも“もう少し時間があれば周辺を散策したかったわね”と話した。

たった1泊だけの嬉野温泉であったが、ゆっくりとくつろげた。機会があれば近くの武雄温泉にも行ってみたい。

昼食後、母が入院している病院(長崎市)へ直行する。

病院は、長崎市と諫早市に隣接するところにあるので交通の便が悪い。タクシーを利用することにした。

車社会になって道路は整備され、交通の利便性は格段に進歩している。九州内も車移動が多くなっているのではなかろうか。点と点の移動は確かに便利である。乗り換えの必要がなく、時間も短縮される。だが、車で移動できる人ばかりではない。

タクシーを呼んだので、病院名を告げたら簡単に到着できると思っていた。

ところが、営業車であるのに、ナビは付いていない、ドライバーは地理に不案内であった。高速利用したのに時間はかかる、料金は取られるわで一寸がっかりした。

病院名が見えてきた時はやっと安堵した。

母の見舞いを口実に訪ねたような嬉野温泉であった。一寸親不孝したようで咎める気持ちもあったが・・・。5月に見舞った時より明るい表情に見えた。                 2006.7.23記

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