霧島・妙見温泉(雅叙苑)
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雅叙苑

雅叙苑入り口

2007/2/162/17


はじめに

昨年同様、息子夫婦のお正月帰省は、時期をずらして2月となった。

正月の慌しい時より落ち着いてゆっくり語ることができる。

2人とも仕事を持っているので2泊3日の短い帰省である。

1泊は、霧島妙見温泉の宿「雅叙苑」を予約してくれていた。

妙見温泉は天降川沿いに湯処が点在する新川渓谷の温泉郷。

明治時代中期に妙見神社跡から湯が湧出し、この名がついたと伝えられる。

昨年宿泊した「石原荘」とは、天降川を挟んで真向かいに位置する。

一帯は湯治場だったところで、今も静かな佇まいの山あいのところである。

「石原荘」「雅叙苑」は近い距離に立地するが、それぞれ宿の趣は違い、どちらの知

名度も全国版である。


「雅叙苑」

昨日を忘れる里といい

明日を忘れる里という

庭に鶏が遊び、ロビーは囲炉裏に薪が一年中燃えて、

働く人の優しさが笑顔が自慢の宿と謳っている。

客室は藁葺き屋根の「離れ家形式」で10部屋。

客室専用露天風呂付は6室ある。

その他に露天風呂が3カ所ある。

料理は地元の食材を使用。

朝食は薪で炊いた御飯を供す。

忘れの里の入り口は坂道を下る。

往来の真ん中を遊ぶ

鶏の親子にふと心をとめた時、

背負ってきた時間が去っていった。

時の流れが置き去りにされた篭がある。

囲炉裏がある。竹のざるに芋が3つ、

コーンコーンと木を打ち案内を請う。

ここがロビーだ。


空っぽになった時間をなんで満たそうかと考える。

囲炉裏でカッポ酒、渓流を聞くのーと、

囲炉裏端でとっておきのバーボン、

CDサウンドを聞くのーと

どっちが乙かな・・・などと


山里には季節が一番の馳走

渓流が、山林が、土が、空気が

四季折々の幸を産む

秘湯、山菜、藁葺きの宿

日常を離れたところに

旅の醍醐味がある


「雅」は風雅な趣

「叙」はこれを与えうることなり


雅叙苑とは

その名のとおり趣を楽しむ里

心を存分に遊ばせるつもりでお越しください

「雅叙苑」HPより


1日目

息子夫婦は1時に到着する。少し早めに鹿児島空港へ出迎えに行った。

到着ロビーへ行ってみると、15分遅れの表示になっているので、2Fのラウンジで昼食を済ませた。

似た時刻に3便到着する。出迎えの人も集まりはじめている。

1人の男性が、直ぐ側を通り過ぎ斜め前に横向きに立った。

どこかで見たような? 然し、咄嗟には思い出せない。

手にしていたコートを羽織った時、正面からの顔が見えた。

瞬時に、NKのど自慢の司会者、宮本アナウンサーに似ていると思った。

最近ネットのニュースで、「3月で退職してフリーになる、某民放局に行くらしい」と報じていた。ちょっとした「時の人」でもあったことも派生して・・・

退職前の忙しい時期に、どうして鹿児島に? お節介な疑問が生じて??

暫くの間、携帯電話をしたり、到着ロビーに人待ち顔で立っていた。

間違って元々、よほど声を掛けようかと思ったが・・・ 誰も気付いている様子もない。

デジカメは持参していたが正面からカメラを向ける勇気はなかった。辛うじて斜めからのスナップを撮った。

ところが、2日後の日曜日は、鹿児島市の宝山ホールからの「のど自慢」中継である。宮本アナウンサーが画面に映っている。
なんという偶然!! これで
1昨日空港で見た男性は彼に間違いなかったと確信した。

思いがけないところで、有名人?を見つけて、誰も気付いていない。こんな場面って、ちょっとうれしくありません? 私の野次馬根性とミーハーな性分は、くすぐられてご機嫌でした。

雅叙苑は空港から近く20分ほどで到着した。

先ず「ロビー」に案内された。

なんと藁葺き屋根の1戸がロビーになっている。

中央の囲炉裏に炭火が焚かれ、周りに木製の椅子5脚、ベンチだけの素朴なロビーである。

夜は、ここに集まって酒を酌み交わしたり、音楽を聴いたり、思い思いの時を過ごす団欒の場である。ロビー

飾り気のない、風通しのよいロビーに吃驚した。

今までのイメージとは程遠いロビーである。

案内された部屋は「もみじ」

部屋といっても藁葺き屋根の一戸建てである。

昔の藁葺き屋根の古民家を移転して宿にしている。

一歩足を入れると、大きな梁の屋根裏、囲炉裏、優しい木目が映る。

冷蔵庫の扉も木目。その上に角型の竹かごが乗っている。子どもの頃、この篭を持って豆腐買いに行っていましたね。ここでは庫内の飲み物を運ぶためのものだろうが・・・

趣がありこの部屋に溶け込んでいる。

一枚ガラスの部屋の戸を開けると、露天風呂がでんと座っている。

一枚岩を人一人はいる湯舟サイズにくりぬいてある。

竹竿から温湯が張られ、賭け流しの湯が溢れている。

軒下に簾がかかってはいるが、外気が入り前面の景色は丸見えである。

部屋からそのまんま露天風呂へ、なんとも贅沢な!!

テーブルには野いちごの葉に、「○○様、ようこそ忘れの里へ どうぞごゆっくり おすごしください 主人」と、文字が添えて置いてある。

日常を忘れ、この空間を丸ごと独り占めできる。

水周りは当世風の洗面所とウオッシュレット仕様になっている。
新、旧使いの部屋造りでも、ちっとも違和感がない。

夕食まで間があるので、近くを歩いてから温泉に入ることにした。                                 


雅叙苑の周辺はちょっと起伏のある所である。

入り口から左に折れて発電所の方向へ歩きはじめた。なだらかな坂道をゆっくり上る。

坂道の左手には趣のある外灯、右手は木が生い茂っている。あちこち苔むした所が多い。

藁葺き屋根を外から眺めようと坂道を上っていくが、木や枝が遮ぎり、距離が短すぎる。屋根が重なり合う様な感じで、外観の茅葺の屋根群の全容は見えない。

昨年泊まった石原荘側からは、雅叙苑は天降川を挟んでくっきりと望めた。風情のある藁葺き屋根、白色光が薄ぼんやりと灯って見えた。

人の往来もない。右手に石を抱いた木があったのです。

先月旅行したアンコール遺跡群の「タプローム」を思い出した。タプローム

根の張り方は同じである。暑いカンボジアはガジュマルの根の張り方も凄まじく、遺跡を破壊する威力を持っている。

坂も終わり、逆方向からの雅叙苑への入り口まで来た。

辺りは紅白梅ともに満開を過ぎているが、山里をほんのり染めている。

ここから引き返した。

部屋に戻って、外湯の温泉「健湯(たけるゆ)」に入った。

45人入る岩風呂は、一枚岩をくり抜いた湯舟である。

誰もいない。掛け流しの温泉は溢れている。

泉質は、鉄分を含んだ弱アルカリ性土類重曹泉

湯冷めすることなくいつまでもぽかぽかと温まっていた。

夕食は息子夫婦と一緒にこちらの部屋で食した。

新鮮な鶏や卵、無農薬野菜をたっぷり使った田舎の味である。素材を生かし、しっかり出しをとった薄味仕立ての料理である。

鶏の刺身は苦手な私もおいしいと感じた。
夕食に一品の魚料理が出ないことも珍しい。

日頃、離れて暮らしている息子夫婦とも久しぶりにゆっくり語れる。

夫も饒舌になっている。うれしいのであろう。 

   

〜おしながき〜おしながき

*        果実酒

*       季節の野菜盛り合わせ

*        地鶏刺身盛り合わせ

*        地鶏焼き

*        山菜田楽(手づくり味噌)

*       そばの実入り団子汁

       (さつま芋のでんぷんで作っただご入り)

*       黒豚の角煮

      (黒砂糖と焼酎で味付けし、じっくり煮込んだ鹿児島黒豚)

*       煮 〆

*       摘み草揚げ(よもぎ、みつば、おおばこ、つばきの花びら、ふきのとう)

*       豆乳蒸し

*       田舎そば

      (毎日手打ち、だし汁は天然の乾燥鮎使用)

*       山菜ごはん、さつま汁

   鶏 刺 し              季節の野菜盛り合わせ
地鶏焼き             田楽&黒豚角煮
煮 〆              そば入り団子汁
摘み草揚げ          山菜ご飯 

2日目




朝は6時に目覚めた。
部屋つき露天風呂

部屋付きの露天風呂に身を沈める。

一枚岩をくり抜いた岩風呂で、湯煙が立ち、かけ流しの湯が溢れる。

静寂の中、明け染めぬ空は未だ薄暗い。

雨模様の予報であるが、山里は朝もやに霞んでいる。

「いい湯だなぁ〜」口ずさみたくもなる。

湯も景色も独り占めにして黙して充足。

下から薪を焚く燻る匂いと煙が上ってくる。真下は藁葺き屋根の厨である。干いも・・・
朝食の味噌汁は囲炉裏の鉄鍋仕立てで・・・

机の上に1冊の「宿を支える女将たち」が乗っていた。

全国の女将10人ぐらいの奮闘記が書いてある。有名な金沢の「加賀屋」と、この宿の女将も掲載されている。

10部屋だけの宿、初めから順風満帆な経営であったわけではない。今は特異な趣の宿として知られ繁盛している。都会の人や外人さんにも人気があるという。

インターネットとの時代に、予約、問い合わせは電話でとなっている。

これもこの宿のこだわりであろうか?

食事にしても10室の客の分量を作ればよい。ちょっとした大家族と考えればよい。大量仕込みの必要もない。家庭料理のような手づくり、きめ細やかな心配り、おもてなしができるというもの。

かといって構い過ぎることもない。寝床を敷き終わると、「これで部屋に伺うことはありません」といって辞する。
御仕着せのない自然体の感じがよい。

「雅叙苑」は、日本の田舎の原風景を思い起こさせ、そこへ迷い込んだような錯覚さえ覚える。ふる里に戻ったような懐かしさと優しさに包まれている。

自然に抱かれた宿と景色に身を委ねると、時間を忘れ心身ともに癒される。誰にも邪魔されない時間と空間を存分に満喫できた。

この時間と空間を持ち帰りたい!!

息子夫婦の嬉しいプレゼントに感謝!!
生憎の雨模様で、チェックアウト後はわが家へ直行した。

おわり
2007.3.3記

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